英会話を「学ぼう」または「学ばせよう」と考えている方は、リアルな教室に通うのと、オンラインで英会話をするのとどっちが良いか迷うのでは無いでしょうか?
特に新型コロナの影響もあり、人との接触は極力避けたいと考えている人は多いでしょう。
また、子供に英会話をさせるために教室へ通わせる場合も、一緒について行くのは大変と思う人。子供一人で通塾させるのは心配だと思う人も多いのでは無いでしょうか。
オンライン英会話なら、自宅にいながら受講できるうえ、受講する時間もある程度自由がききます。
個人的には、通塾のための移動時間がもったいないので、オンラインが良いのではないかと思います。
けれども、オンライン英会話が英語能力の向上を見込めるのか不安もあります。
なんとなく、リアルな英会話教室の方が優れているのではないかと感じてしまいます。
そこで、この記事ではオンライン英会話が、どれくらい効果を期待できるかを調査した学術論文を引用して、オンライン英会話の効果を検証してみました。
中学校の授業にオンライン英会話を導入した時の効果
畠山ら(2018)の研究では、中学校の授業にオンライン英会話を導入した時の成果を報告しています。
授業を受けたのは中学2年生で、合計5回の英会話が実施されました。
実際の授業内容は、フィリピン人の講師とオンライン(スカイプ)で25分間英会話をするというもので、それに関する紙教材も用意されていました。
英会話の前後の空き時間には英会話に関する紙教材を予習・復讐する機会が与えられました。
紙教材の内容は「自分のことを紹介してみよう」といったかんじで、オンライン英会話の事前に、ある程度準備ができるないようでした。
なお、オンライン英会話の効果を調べるために、英検3級程度のリスニング問題(30点満点)を事前(5月テスト)と事後(7月テスト)に行なっています。
リスニングテストの点数が向上した
その結果は5月テストの平均点は12.51(標準偏差5.034)、7月テストの平均点15.30(標準偏差5.077)であった。5月テストと7月テストの平均値の差を有意水準5%で両側検定のt検定により検討した。その結果、t(68)=-6.226、p<.01であり、平均値の差は有意であった。(畠山ら,2018)
と述べています。
すなわち、英語リスニング能力が向上したことを確認できたということです(統計学的有意差あり)。
英語学習意欲の変化
英語に限らず勉強をするときには”やる気(モチベーション)”が重要となります。この「やる気」は学習者の心理状態により大きく変わってきます。
この研究では英語の学習意欲に変化が見られるかを調べるために、先ほどのリスニングテストと合わせて下記のような質問を行なっています。
オンライン英会話をする前→5月調査
オンライン英会話の授業が全て終了した後→7月調査
5月調査と7月調査で、上記質問項目の1、2、6、7で平均値に違い(統計学的有意差)が見られました。 すなわち、オンライン英会話により下記のような変化が確認できたことになります。
さらに生徒へのインタビューも合わせ英語でコミュニケーションすることで英語を話すことに慣れ、英語を話すことを楽しく感じるようになり、それによって英語を話すことに対する心理的抵抗感を軽減するという効果はあったと考えられる(畠山ら,2018)
と述べています。
短い英会話でも数回行うことで心理的に楽になるようです。
ある程度、英語学力がある方がスムーズな英会話につながる
中学2年生の最初の頃に行なったオンライン英会話なので、教科としての英語を習い始めてから1年ちょっとしかたっていません。
したがって、文法的にも語彙的にもかなり未熟な状態でオンライン英会話を行なったことになります。
その結果、なるべく理解可能な教材を選定したが、実際にオンラインで講師側から指示を受けても語彙力と文法上の知識の不十分さ、リスニングやリーディングの能力の不十分さから理解できず、進行に支障をきたしている様子も時折見られた。(畠山ら,2018)
として今後の画題として挙げています。
ただ話すよりも、ある程度英語の技能がある段階でオンライン英会話をした方が早い上達が見込めるかもしれません。
しかし、5回のオンライン英会話を経験することにより、英語を聞き取る能力は向上したのは事実です。
そのようなことから、英語に不慣れな子供でもオンライン英会話をすることにより、多少なりとも英語能力に効果があると考えられます。
引用文献:
畠山 均・里 梨佐子・脇山 祐一郎,中学校でのオンライン英語学習プログラム導入の成果と課題,純心人文研究,Vol.24,pp.259-266,2018
大学生を対象にしてオンライン英会話の効果を検証した研究例
先ほどご紹介した論文は英語を学び始めてばかりの中学生の事例で、英文法や語彙力が未熟な場合でしたが、今回ご紹介する事例は大学生を対象としています。
対象が大学生ですから、学校教育で一通り英語を学んだ人に対してオンライン英会話がどのような効果をもたらすかを知ることができるかと思います。
大和田(2016)の研究は、東京音楽大学の学生を対象にオンライン英会話の効果について検証しています。
こちらのオンライン英会話もスカイプを用いてフィリピン人講師と話すという内容で、4ヶ月間受講した場合にスピーキング能力がどうなるかを検証しています。
半数以上のスピーキング能力向上が認められた
この調査に参加した学生は5人なので、統計学的にサンプル数は多いとは言えませんが、興味深い結果が出ています。
まず前提として、調査に参加した5人の学生の英語能力は英検2級(2人)、準2級(3人)と比較的英語力を持っている人たちのようです。
この5人が4ヶ月間オンライン英会話を受講したときのスピーキング能力を調査した結果が下のグラフになります。それぞれ各個人にはA〜Eまでの記号で表しています。
受講前と比べて受講4か月後に点数の上昇がみられたのはA、C、Eの3人であった。(大和田,2016)
サンプル数が少ないとは言え、半数以上の5人中3人のスピーキング能力が向上したことが確かめられたようです。
オンライン英会話の受講時間数が英語能力向上に寄与
興味深い結果はここからで、オンライン英会話を受講した時間により能力の向上幅が異なっているという点です。
下記に学生A〜Eの受講時間の表を引用します。
Aの4か月間の受講レッスン回数は139回であり、時間に直すと57.9時間(139回×25分=3,475 分)となる。つまり、Aはかなりの時間数をこなしていたために、点数の上昇の幅が大きかったと考えられる。(大和田,2016)
と述べています。
成績が向上しなかったBとDは、表を見るとそれぞれ50回、60回と受講回数が少ないのが分かります。また、A以外の4人の回数については、最初の2か月(6月~7月)と比べ、次の2か月(8月~9月)で、Eはやや減り、B、C、D は大幅に減っていた。(大和田,2016)
と述べています。
やる気がないとオンライン英会話は継続が難しい?
上記までのスピーキングテストは一部の学生にのみ実施されたもので、他にもオンライン英会話を受講した学生はいて、週あたりの受講回数を調べたデータも論文には記載されています(下図)。
週3回以上が理想的な回数であるとすると、ほぼ半数の17人(45.9%)がこの基準に達している。しかしながら、週1回未満が最も多いということから、高い学習意欲を持った学生でないと多くの回数をこなすことはむずかしいといえる。(大和田,2016)
と記述しており、継続的にオンライン英会話を続ける難しさを指摘しています。
引用文献:
大和田 和治,東京音楽大学におけるオンライン英会話プログラムの導入とその教育的効果の検証,東京音楽大学研究紀要,Vol.39,pp.53-66,2016
オンライン英会話の選び方
上記2つの研究事例で見えてきたことは、いくつかありますが、共通するのは「やれば英語能力は向上する」可能性が高いという点です。
これは英語に限ったものではなく、他の勉強にも当てはまるのは皆さんの周知のことだと思います。
ポイントとなるのは、勉強を継続して続けられるかということになるのですが、それには身の丈に合った学習方法なり教材を選ぶのが近道だと考えられます。
現在の英語能力でオンライン英会話を選ぶ
最初にご紹介した論文(畠山ら,2018)では、英語学習を始めて間もない中学生の事例でしたが、ある程度の文法なり語彙力がないとスムーズな英会話は難しいこともあるということでした。
私の経験上、実際に外国人と話す場合、間違った文法でもこちらの意図は伝わるケースが多い気がします。
語彙力についても、伝えたい単語に近いものを何個か話せばなんとか分かってもらえた記憶があります。ですが、まったくもってスムーズな会話とは言えませんでした。
この記事を読んでくださっている方のほとんどは、これからオンライン英会話を始めようかと思って情報収集をしているところでしょう。
そのような方の目的は「きちんと英語で会話できる」でしょうから、何となく伝わる英会話ではダメだと思います。
世の中にあるオンライン英会話には、単に英会話をする機会を得るだけのものも存在します。
そのようなオンライン英会話は、ある程度英語能力が高いのであれば、ネイティブスピーカーと話すことにより、聞くことと話すこと(発音)が上達するでしょう。
ですが、文法や語彙力に問題を抱えている場合、会話の途中である程度の指導を受けられなければ挫折してしまうかもしれません。
特に、ある一定以上の年齢になると、「間違えてはいけない」や「外国人と話すのは壁がある」のような意識があることが多く、上手な会話ができないことがモチベーションを下げてしまう結果となるかもしれません。
ですので、英語力に自信のない人(大人)は「英語を教える能力を持つ人」と英会話をした方が良いかと思います。
例えばオンライン英会話でも、日本人の講師が対応するものもあるので、わからない部分を日本語を混ぜて指導してもらうというのも手だと思います。
また、テキスト等の教材がしっかりしていて、教材をもとに会話を進めるようなものも良いでしょう。
リアル英会話教室が良い場合
オンライン英会話は3日坊主に注意
大和田(2016)で使用したオンライン英会話は、受講期間中であれば、自由なスケジュールで1日何回でもオンライン英会話を実施できるという環境だったようです。
週3回以上の受講を進められたにもかかわらず、およそ半数の学生が週一回未満しか受講しないという状況でした。
オンライン英会話で学びたいという気持ちがあっても、バイトやサークルで忙しい大学生にとって、いつでも受講できるオンライン英会話の場合、「いつでもできるから今はいいや」となりがちなのだと思います。
このようなことは大学生に限らず誰にでも経験があるのではないでしょうか。
実際、オンライン英会話のメリットとして、いつでもどこでも受講できるというのがあり、これを訴求しているオンライン英会話教室も多いです。
オンライン英会話を始めたのはいいが、次第に受講する回数が減って、いつの間にかフェードアウトとならないためには、目標を立てて受講スケジュールを決めると言ったことが必要となります。
スケジュールが決まっている英会話教室は計画的に通える
リアルな英会話教室の場合、毎週何曜日の何時からといった通塾スタイルをとれば、コンスタントに英会話をすることができます。
なので、自分でうまくスケジュールを立てられない人はリアルな英会話に通うというのも良いかもしれません。
オンライン英会話でも英会話学習と同時に、カウンセリングなどで英語の学びをサポートするサービスを提供する業者もいくつかあります。
そのようなサポートがあれば、自分の英語技量と都合に合わせた受講スケジュールを組むことができるかもしれません。
また、少し大きな子供にオンライン英会話を受講させる場合は、子供任せにせず、親がスケジューリングした方が良いでしょう。
幼児や小学生は素直に英会話に取り組めるメリット
畠山ら(2018)の研究では、中学生の文法力・語彙力に未熟さがあり、英会話のスムーズさに問題がある場合があると指摘がありました。
では、文法や語彙力が皆無な幼い幼児や小学生ではどうでしょうか。
当然、幼児や小学生向けのオンライン英会話教室は、英会話をするというよりは「絵を見せて単語を発声しリピートさせる」といったことや、「一緒に英語の歌を歌ってみる」、「英語でゲームをする」といった内容ですから前述した中学生のような心配はないかと思います。
むしろ、英語を習い始めた中学生くらいから大人にかけて生じる「英語を話すことへの抵抗感」、「外国人と話すことへの不安」、「間違えては恥ずかしい」といったことがないので、子供は素直に英語を受け入れる可能性が高いと思われます。
なお、子供向けのオンライン英会話がどのようなものかを知るには「リップルキッズパーク
」の紹介動画が分かりやすいです。
そして、うまく運べば幼い子が自然と日本語を覚えるように、英語も自然と身につく可能性があります。
もちろん、自然に英語が自然に身につくように仕向けるためには、それなりの量のオンライン英会話が必要でしょう。
また、普段の生活の中での親子の会話にも、英語に関する問いかけをするなどの工夫が必要だと思います。
なお、幼少期から英語に触れさせるメリットについては「英語教育を幼児・小学生から始めた方が良いのか?学術的な研究例から検証してみた。」という記事で詳しく書いていますが、子供が小さい時から英会話をすることはプラスになると思います。
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