
この記事では、専門学校の「職業実践専門課程」における情報公開について解説します。
「職業実践専門課程」は専門学校の質の確保と向上のために、企業と連携し実践的なカリキュラムを実施する専門学校を文部科学大臣が認定するものです。
職業実践専門課程に認定された専門学校については、その課程・学科の情報を公開することが義務となっています。

「職業実践専門課程」についての詳しい内容やメリットについては、「専門学校の「職業実践専門課程」のメリットと認定校一覧」でご紹介していますのでぜひご覧ください。
専門学校の情報公開の状況
大学では2011年(平成23年)から情報公開が義務付け(文部科学省令第15号)されています。
これにより、大学の教育に対する考え方や入学者数、就職状況などが明確にわかるようになっています。

一方、専門学校では「情報公開は望ましい」にとどまっており、法令による義務化はなされていません。
ただし、冒頭で書いたように「職業実践専門課程」については一定の情報公開が義務付けられているほか、「大学等における就学の支援に関する法律 通称:大学無償化」により、無償化対象校の場合、専門学校でも情報公開が義務となっています。
無償化対象となっている専門学校は、6割程度となっており、残りの4割については義務ではないので、情報を開示していない場合が多いと考えられます。

進学者から見た情報公開の重要性
進学希望者が進学先の情報を知るには、学校案内パンフレットやホームページがメインの媒体かと思います。
これらは広告なので、かなり魅力的に書かれています。例えば・・「好きなことを仕事にする」、「高い就職率」、「高い試験合格率」・・など、専門学校の広告では見慣れた文言です。
もちろん、ほとんどの専門学校で、それらの文言に嘘は無いかと思います。
また、現実的に入学者全員が「好きなことを仕事にする」ことは叶わないであろうことは皆さんも想像がつくのでは無いでしょうか。
ですが、「夢を実現する」ために専門学校へ進学するわけですから、誰もがその専門分野の仕事に就職したいと考えているはずです。
(資格をとって「人生を安定させたい」や「より給料が高い就職」と言う人もいるかと思います。)
なので、「高い就職率」や「高い資格合格率」という文言だけでなく、リアルな数字を知る必要があると考えます。
具体的には、「卒業生が何人でそのうち何人が就職できたか」や「卒業生何人のうち何人が資格試験を受験して、何人合格したか」などです。
例えば、就職率には2つの表現の仕方があり、「希望就職者就職率」、「卒業者に占める就職者の割合」があります。通常、表に出る数字は「希望就職者就職率」です。
情報公開では両方の数字が明記されているため、とても参考になります。なお、これらの数値の見方については後述します。
多くの職業実践専門課程の認定学科では、この二つの数値に大きな乖離は見られませんが、いくつかの課程では数十パーセントの乖離が見られます(進学者を除いた数値で)。
すなわち、希望就職率は100%に近いのに、実際の卒業生の就職率はそれよりも低いことがあるということです。
ホームページやパンフレットの情報のみでの学校選びでは、情報不足なのかもしれませんね。




「職業実践専門課程」情報の公開場所
職業実践専門課程に認定された専門学校は、基本的に別紙様式4(詳しくは後述)という文書をホームページで情報公開をすることになっています。
ホームページのどこに記載があるかですが、現状では専門学校ごとにホームページでの公開方法はバラバラです。そして、公開情報へのアクセスのしやすさも様々です。
中には公開情報を探すのに苦労したり、トップページから直接のアクセスはできず、検索エンジンを使わないと見つからない例もいくつかありました。
ですので、私が国内の職業実践専門課程の公開情報にアクセスした時の経験をもとに、いくつかのパターンをご紹介します(図1)。
公開情報の探し方
まず、リンクの文字ですが、「情報公開」や「職業実践専門課程○○○」などが多いかと思います。「情報の公表」、「情報提供」などと表現しているのも見受けられます。単に「職業実践専門課程」となっているものは、職業実践専門課程の紹介で公開情報にはアクセスできないパターンが多いです。
これらが見あたらない場合、「学校紹介」や「学校概要」、「○○専門学校について」などのメニューから進むと発見できる場合が多いです。
リンクの掲載位置の傾向
ホームページのレイアウトは、閲覧するデバイスによりデザインが変わります。PCで閲覧した方が公開情報にアクセスし易い傾向にあると思います。
また、公開されている文書はA4サイズのPDFファイルなので、スマホで読むのは不便かもしれません。

- PCによる閲覧の場合
- ①メニューや②本文にバナーが設置されていない場合、③ヘッダー部分と④フッダー部分(図1参照↑)にあることが多いかと思います。この場合、フォントサイズが小さく見落とす可能性があります。
- スマホによる閲覧の場合
- スマホの場合、メニューはこのような形状(
)になっていて、このボタンを押さないとメニューは現れません。本文、ヘッダーやフッダーに見あたらない場合、このボタンを押してメニューを表示させましょう。

公開情報が見つからない場合の対処法
- サイトマップから探す
- サイトマップとは、ホームページ全体に掲載されている全情報を一覧にしたページです。親切なサイトではトップページの隅のほうに「サイトマップ」というリンクがあります。
- 検索エンジンで探す
-
Googleなどの検索エンジンで直接探す方法です。下記のような検索ワードが効果的です。
- ○○専門学校 別紙様式4
- 〇〇専門学校 情報公開
- ○○専門学校 職業実践専門課程

公開されている情報
公開されている情報の種類や公開方法は学校によって様々です。職業実践専門課程や高等教育の修学支援(大学無償化)の対象校においては情報公開をしなければならない内容が定められています。
もちろん、職業実践専門課程や高等教育の修学支援(大学無償化)に指定されていない専門学校でも、ホームページで率先的に情報を公開している専門学校もあります。

職業実践専門課程に認定された課程での情報公開では、原則的にホームページでの公開をしなければならない情報については書式が決まっています。
「職業実践専門課程 別紙様式4【職業実践専門課程認定後の公開様式】」という名称がついています(以降、別紙様式4とします)。なお、書類の冒頭タイトルは「職業実践専門課程の基本情報について」となっています。
書式が統一されているので、職業実践専門課程に認定された専門学校を容易に比較することが可能です。

教育の質を見極めるための別紙様式4の見方とポイント
別紙様式4は大抵PDFファイルで提供されており、A4サイズで10〜20ページ程度です。ですので、しっかり読み込むにはパソコンかタブレットでの閲覧が適していると思います。
基本的に別紙様式4について、全てを読破し理解できれば良いのですが、専門学校選びでは複数の学校を比較するのが普通でしょうから、ポイントを押さえて学校間の比較に利用するのが良いでしょう。

- 図2 ①の部分
修業年限、時間配分、定員・実員、教員数等 -
【ポイント解説】
- 講義、実習、実技の時間配分について確認します。技術が要求される専門分野では実習や実技が多めに配分されている方が良いでしょう。
- 生徒総定員は募集定員とは異なり、その課程(学科)全学年での定員です(募集定員×修業年限)。
- 生徒実員はその課程に在籍する全ての学年の生徒数を足したものです。
- 何人の教員で生徒の面倒を見るのか確認します。総教員数が多い方が多くの先生に見てもらえることになります。専任教員は学校に常駐する教員で、あまりにも少ないと不便なことがあるかもしれません(質問したくてもいないとか)。
- 図2 ②の部分
就職等の状況 -
【ポイント解説】
- 主な就職先、業界等は欄が小さいので全ての就職先は記載されておらず、役に立たないと思います。別の資料をあたりましょう。もし、企業名が記述されていれば、学校側がアピールするのに都合が良い企業名が記載されているかもしれません(有名企業、学校の関係企業、地元有力企業など)。
- 就職率は就職希望者数※2のうち何人が就職(就職者数※2)できたかを%で示します。
また、卒業者数と就職希望者数の数字が一致しない場合、進学した人か就職を希望しなかった人がいることになります。普通、進学者数は人数が明記されているので、何らかの事情で就職を希望しなかった人の人数は把握できます。就職を希望しなかった人があまりにも多い場合は注意が必要かもしれません。 - 卒業者に占める就職者の割合は進学者を除いて、再計算してみてください。様々な事情があり、就職を希望しなかったとしても、再計算した数値が著しく低い場合は注意が必要かもしれません。
- その他には関連業界のアルバイトのほか、進学者数が記載されます。まれに、就職率が悪い場合にその理由を記載している学校もあるみたいです。
※1「就職希望者」とは、卒業年度中に就職活動を行い、大学等卒業後速やかに就職することを希望する者をいい、卒業後の進路として「進学」「自営業」「家事手伝い」「留年」「資格取得」などを希望する者は含まないことになっています。
※2正規の職員(1年以上の非正規の職員として就職した者を含む)として最終的に就職した者(企業等から採用通知などが出された者)をいいます。 - 図2 ③の部分
国家資格・検定、その他・民間検定等 -
【ポイント解説】
表のうち、まず注目したいのが受験者数です。前述した卒業者数と受験者数が一致しない場合、注意が必要かもしれません。すなわち、合格できそうな人だけが受験している可能性があります。
そのような状態で合格率が高くとも、その課程(学科)がその試験に対して有効な教育を果たしているとは言えないと思います。
パンフレット等で、そのような状態で高い合格率などと訴求しているようであれば不適切であると考えます。
必ずパンフレットと突き合わせて検討する必要があるかと思います。 - 図2 ④の部分
中途退学の現状 -
【ポイント解説】
当然、中退率が高い場合は問題があります。この場合、学校側の対応等に問題がある場合や、人間関係など個人や環境に起因する問題の場合、ミスマッチなど様々ですが、中退するということは本人にとって一番不利益なことと考えられます。ですので、入学を決めるさいは十分に検討しましょう。
ミスマッチによる退学は学校選びの時に防げる可能性があります。広告の文言だけに頼らず、公開情報をよく検討しましょう。 - 図2 ⑤の部分
第三者による学校評価 -
【ポイント解説】
第三者による学校評価を行なっている専門学校はまだ少ない傾向にあります。第三者による学校評価を行なっている場合、その情報を見ることをオススメします。学校評価を専門とする団体の評価であれば、客観的な学校の評価を知ることができると思います。
メモ
この辺のことは問い合わせやオープンキャンパスで聞く必要があるかもしれません。

- 図3 ⑥の部分
-
【ポイント解説】
教育課程編成委員会はカリキュラムについて議論し、より良い実践的なカリキュラムを作成するために存在します。
どのような企業の方が参画しているかを注目して見ましょう。例えば、地元の有力な企業の方が入っているとすれば、地元就職を意識した編成委員を選定していると考えられます。
また、世界的な知名度を持つ企業の方が入っているとすれば、急速に進むグローバル化を意識した編成委員の選定ではないでしょうか。

- 図3 ⑦の部分、図4 ⑦続き部分
企業等と連携した、実習、実技、実験または演習 -
職業実践専門課程の肝となる企業との連携に関する部分ですので目を通しておいた方が良いです。
特に図4⑦の続きの部分「具体的な連携の例」は、具体的に企業が関わる授業の概要を知ることができるので必見です。
企業が連携しなければ実現しないような実習等であれば、価値があると言えるのではないでしょうか。
なお、ここでは代表的な5科目までの記載ですので、学校がアピールしたい科目が記載されてると思われます。
後述する「授業科目の概要」では全ての連携授業を見ることができます。

- 図5 ⑧の部分
学校関係者評価委員の全委員の名簿 -
【ポイント解説】
教育内容や実施状況などをチェックをする委員ですから、前述した教育課程の編成委員と同様、どの様な企業が参加しているかを確認しましょう。
また、PTAや卒業生が入っていると、実際に教育サービスを受けた側の意見も反映されるため良いと思います。 - 図5 ⑨の部分
「専門学校における情報提供等への取り組み関するガイドライン」の項目との対応 -
【ポイント解説】
この項目で、学校が設定する項目数が多く、情報公開方法がホームページとなっていれば、情報公開に前向きな学校と言えます。
中には申し出ることにより閲覧できるという情報提供の方法をとる学校もあり、情報へのアクセス性がいまいちな場合もあります。

- 図6 ⑩の部分
授業科目等の概要 -
【ポイント解説】
課程で実施される各授業の概略を知ることができます。学校によってはシラバスというもっと詳しい内容のものを別途公開していることがあります。
企業が連携して行う授業もどれなのか分かるので、見ておいた方が良いです。前述した図4⑦の続きの部分「具体的な連携の例」では代表的な5科目だけの記載ですが、こちらは全て分かる様になっています。