リベラルアーツとは
リベラルアーツは日本では「一般教養」または、単に「教養」として訳されることが多いようです。 しかし、英語の意味を直接訳すと「自由な芸術」となり、「教養」とは内容が異なるように思えます。
直訳すると
リベラルアーツ
liberal【自由な】+art(s)【芸術】
日本の学問では大まかに理系と文系と2つに分けることがあります。
西洋では大きく2つに分けると、サイエンス(science)とアート(art)に分けます。
ここで、日本と西洋での分け方に食い違いがあるため、アートというと日本人は音楽や絵と思ってしまうのです。
このアートの語源はラテン語のars(技術)であり、いわば「人間のなせる技」です。
人が人として生きていくために、必要な技術や芸事(または知識)と捉えた方が感覚的に良いと思われます。
アートについては、長くなるのでこれくらいにして、リベラル(自由な)の方を説明します。
この、リベラルという語を説明するには、古代ギリシャ〜古代ローマ時代まで話は遡ります。
その時代は奴隷という身分が存在していました。
その上位に市民または自由人と呼ばれる身分の人々が存在し、市民は政治、納税、兵役のほか、市民としての行動規範厳守の義務を負いました。
今も昔も人間社会をうまく回すためには、様々な問題を解決する必要があります。
そのためには、論理的に説明や議論をする方法や、その前提となる知識が必要なことはわかると思います。
その時代、市民(自由人)として必要と考えられた学問が「自由7科」と呼ばれていて、文法・修辞学・弁証法・算術・幾何・天文・音楽でした。
これらが現代でいう社会人として必要な知識『教養』に該当するものでした。
そして、現代のリベラルアーツの原点はここから始まります。
その後、清教徒(ピューリタン)によりアメリカに最初の大学(後のハーバード大学※1)が作られ、リベラルアーツ教育を展開しまた。
その目的は、未開拓なアメリカを率いる社会のリーダー(牧師)を養成する目的でした。
また、その頃からいくつかのリベラルアーツカレッジがアメリカで創立され、現在に至っています。
大口 邦雄 (著)
大学のリベラルアーツ教育
一般的な4年生大学では、1−2年生で一般教養を規定単位数取得し、3−4年生で専門科目を受講する流れです。
一応、この2年間の一般教養がリベラルアーツに匹敵するものとして、カリキュラムの編成が行われているようです。
しかし、受験する時に学部と学科を選んで入学するので、自分の将来の専門は決まっています。
例えば、電気工学を専攻することが決まっている人が、1・2年次に受講する教養科目で宗教学を学んだとします。
「電気工学を学ぶのに、宗教学が何の役に立つのか?」「社会人になって何の役に立つのか?」疑問に持つのは当然かもしれません。
マンガ②の事例では、一般教養で宗教について学んだとしても、自分の専門分野との「思考の融合」ができなかった例を表してみました。
つまり、教養的な知識は知っているだけでは、役に立たないかもしれないということです。
リベラルアーツ教育は、教養的な知識を詰め込むだけではないのが特徴です。
すなわち、得られた多くの知識により、どのように考え、答えを導き出すかを重視します。
リベラルアーツ教育は考える力を養う
リベラルアーツ教育の特徴のひとつとして、少人数でのゼミでのディスカッション(討議)やエッセイ(小論文)の作成、プレゼンテーション(発表)などが挙げられます。
教養的知識をインプットするだけでなくアウトプットし、教員や学生間での議論を通して考える力や、伝える力を養うことができます。
物事を議論をしたり人に伝えるためには、その都度考える必要があります。
これを繰り返すことにより、最終的には様々な問題を自分で考え、答えを導く力が養われます。
グローバル化した今日では、日本の常識は世界での少数派であることを知らなければなりません。
そして、世界の常識も未来の常識とは限らないことも頭に入れておきましょう。
今後、変化の激しい社会を生きていくためには、自分の頭で考え、行動する力が必要となるのです。
リベラルアーツ教育のこれから
アメリカでは現在もリベラルアーツ教育は重視されており、名門のリベラルアーツカレッジは入学も卒業も難しいとされています。
そして、それらリベラルアーツカレッジは多くの著名人を輩出しつづけています。
このように、アメリカでは国または世界をリードする人材がリベラルアーツ教育を受けています。
一方日本では、国際基督教大学のようにリベラルアーツ教育を専門に行う大学もありもありますが、新しい動きもみられます。
専門分野に偏らないよう、専門分野と並行して教養教育を行う大学も出てきています。
また、学問分野の『エリア横断』という新しい考えのもと九州大学では共創学部を設置しました。
そこでは、社会の「グローバル化への対応」と「共創力の養成」に力を入れたカリキュラムを展開しています。